地図アプリを開くと、青い丸が、ぴたっと自分の場所に出ます。
当たり前に見えますよね。
でも、地下でも、ビルの中でも、だいたい合っています。あの丸は、どうやって決まっているのか。
ケータイ Watchのコラム(藤岡雅宣さん、2026年9月30日)の内容に沿って、整理します。
結論:1つの技術ではなく、5つの手がかりの突き合わせ
スマホは、衛星、基地局、Wi-Fi、Bluetooth、内蔵センサーの結果を、OSの裏側で突き合わせています。
たとえるなら、探偵です。目撃証言が1つでは不確かでも、いくつも重ねると、場所が絞れます。
土台:三角測位
- 位置が分かっている基準点までの距離を使う
- 2点だと候補が2か所に残るので、3点目で1か所に絞る
- 距離は、電波が届くまでの時間(電波は1秒に約30万km進む)を、ナノ秒単位で測って求める
5つの手がかり
① 衛星(GNSS):屋外で数メートル単位
- GPS、みちびき、Galileo、GLONASS、BeiDouを併用する「マルチGNSS」が標準
- 位置の計算には、最低4機が必要。スマホの時計の狂いが、4つ目の未知数になるため。時計が1マイクロ秒狂うと、約300mの誤差になる
- 弱点は、ビル街の反射波と、電離層などによる遅延
- 対策は、L1帯とL5帯のデュアルバンド。L5は、直接波と反射波を分離できる。対応は上位モデルを中心に、ミドルレンジにも広がっている
- A-GPS:基地局のセル番号などをサーバーに送り、衛星の軌道情報を受け取る。ないと最初の測位に数分、あれば1〜2秒
② 基地局:粗いが速くて省電力
- セル番号による測位は、精度が数百m〜数km程度と粗い。ただし1秒以内で得られ、省電力
- 4Gでは、基地局からの距離を約78mごとの帯で絞れる仕組み(Timing Advance)がある。通信中しか分からず、地図アプリではあまり使われない。緊急通報の位置の絞り込みなどに使われる
- ビル街や屋内では、反射波のせいで、実際より遠く見積もることがある
③ Wi-Fi:屋内・地下で活躍
- アクセスポイントの固有の識別子を、AppleやGoogleが集めたデータベースと照合する。接続しなくてよい
- 範囲は半径数十m以内。3台以上の電波の強さから、数十m〜十数m程度まで絞れる
④ Bluetooth(BLE)・UWB:近距離
- BLEビーコンは、数m〜十数mの近距離を捉える。施設専用のアプリが前提
- 紛失防止タグは、他人のスマホ経由でクラウドに位置が集まる仕組み。識別子を定期的に変えて、プライバシーを守る
- UWBは、条件が良ければ約10cm精度で、方向も分かる
⑤ 内蔵センサー:歩いた分を足し算
- 加速度(歩数・歩幅)、ジャイロ(向きの変化)、地磁気(方位)で、最後に確定した地点からの移動を足していく
- 誤差が積み上がる。電波の補正なしで数分歩くと、数十mずれることがある
高さ(何階か)はどうやって分かる?
- GNSSの高度の誤差は、水平の1.5〜2倍以上。屋内のWi-FiやBluetoothも、階の判別が難しい場合がある
- 気圧センサーが役に立つ。標高10mで、気圧は約1.2hPa下がる性質を使う。数十cmの高低差も検知でき、基準の階からの差分で、階数を推定する
- 気圧は、天候でも変わる。そこで、地上の基準点の気圧をクラウドで照合する方式があり、誤差は2〜3m以内とされる
さらに高度な技術
- RTK:位置が分かっている基準局と比べて、数cm級まで絞る。自動運転、農機、ドローンなどで使われる。大手3社が法人向けサービスを提供している
- MBS:ビル屋上や基地局に地上の送信機を置き、衛星に似た信号を高出力で送る。壁を貫通して屋内・地下に届く。現行の市販スマホは非対応で、整備は計画の段階
5Gや6Gでは
コラムの記載です。
- 5Gでは、電波が届くまでの時間や、到来角度の測定が標準化されている。ミリ波やMassive MIMOで、工場や商業ビルの中で、数十cm〜1m前後の精度を目指している
- 6G(2030年ごろの商用開始が目標)では、通信しながら周囲をスキャンする「センシング」が検討されている。端末を持たない人や物の、存在・距離・速度・形状の推定が狙い
ミリ波やMassive MIMOについては、ミリ波の記事と、フィジカルAIの記事でも触れています。
位置情報と、電池・電波の関係
位置情報を使うと、電池を消費します。バッテリーが減る原因の記事で、位置情報の設定にも触れています。基地局と電波の基本は、こちらの記事です。
まとめ
- 青い丸は、衛星、基地局、Wi-Fi、Bluetooth、センサーの結果を突き合わせたもの
- 屋外の数メートル精度は衛星が担い、屋内・地下はWi-Fiや気圧センサーが補う
- 基地局による測位は粗いが、速くて省電力。緊急通報の絞り込みにも使われる
- 5G・6Gでは、通信そのものが「位置とセンシング」の道具になっていく
書かれていない内容(衛星の屋外での具体的な誤差の数字、消費電力の比較、機種・キャリア別の精度など)は、このコラムには載っていません。
出典:ケータイ Watch
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